ウェリントンをはじめる前は何をされていたんですか?――

ウェリントンをはじめたのは2005年ですが、以前はアンティーク家具を販売するお店に勤めていました。そのお店にも職人さんはいましたので、 古い家具を仕入れて修復し販売していたのですが、その一環でアンティークのドアやステンドグラスも一緒に仕入れて売っていたんです。 ただ、そのお店にいたのは家具の職人さんで、ドアやステンドグラスなどのアンティーク建具については対応できなかったので、例えば「このアン ティークドアを自宅で使いたい」とか、「今度はじめるお店にこのステンドグラスを付けたい」というお客様に対しても、取り付けや加工の依頼を 受けることができず、販売のみという形でお受けしていました。

ウェリントン創業のきっかけを教えてください――

前職のお店でもアンティーク建具をお求めになるお客様は多かったのですが、当時は取り付けや加工の依頼はお受けできていませんでしたの で、モノをお売りするだけ。そうすると、購入されたお客様はおつき合いのある工務店さんなどに取り付けを頼まれるのですが、一般的な大工さん はアンティークの建具を触ったことがなく、当然知識もありませんので取り付けなどは断られることが多いんです。そうなるとお客様は困ってしま いますよね。 少しサイズを直せば取り付けられるのに、お客様からすればせっかく理想のアンティークが見つかったにも関わらず、加工や調整の問題だけで アンティークのある空間づくりをあきらめることになってしまう。前の会社では、そういう例をたくさん見てきました。 だから私がお店をはじめるときは、アンティーク家具のプロとしてだけでなく、アンティークのドアやステンドグラスについてもしっかり勉強して、 サイズの加工や取り付けなども専門的にできるアンティーク屋さんにしたいと思ったんです。テーマは、「あとちょっとが叶うお店」みたいなイメー ジですね。そんな想いでウェリントンをオープンして、現在に至るという感じですかね。

建具も扱うアンティークショップというのは多いのでしょうか?――

アンティーク家具を扱うお店は以前からたくさんありましたが、アンティークのドアやステンドグラスも扱っているお店は、昔は少なかったですね。 私たちが10 年15年とやってきた中で、インターネットでの販売なども手がけはじめたころから、建具も扱うお店が増えてきた気がします。 ただ、それでもやはり当店のように、アンティーク建具を修繕・加工して取り付けまでできる知識をしっかり持ってやっているところは少ないので、 そこは創業からいまだ変わらず、私たちの最大の強みだと自負しているところでもあるんですよ。

工務店との打合せなども代行されているそうですね――

多くのお客様は雑誌やインスタグラムなどを見て、こんなアンティークのインテリアがいいなとか、このドア素敵だなとか、憧れから入ると思うんです。 でも、家づくりでもお店づくりでも、結局お客様が困るのは、実際に設計や工事をされる方々とのやり取りなんですよ。例えばアンティークのドアを 取り付けるためには、現場監督や建具屋さん、ドア枠の周りにタイルを貼るタイル屋さんなど、いろんな人が絡んできますので、その都度お客様自 身が彼らと話して決定していかないといけないんですね。 それが上手く伝わらないと、せっかくの理想のドアも変な取り付け方をされてしまったり、床や壁のイメージと合わなかったりして、結局、精神的に 疲弊するだけで結果は残念なものになってしまう。 楽しいはずの家づくりをそんな思いで終わらせないために、お客様には夢だけ語っていただいて、あとの細かい部分はできるだけ私たちのほう でサポートさせていただければと思っています。

アンティークの家具・建具を扱ううえで心がけていることは?――

お客様が家を建てたり、リフォームをされたり、またはカフェや美容院などお店の開業に際して、当店のアンティーク家具や建具を求めてきてくだ さることが多いのですが、店頭で見てアンティークのデザインや素材を気に入って購入されても、お家やお店の床や壁がお粗末だと台無しです よね。そういうときは、うちの売り物ではないけれど、こういう床材や壁紙がありますよと、トータルでご提案することもあります。 結局私たちはアンティークの家具や建具を販売したいのではなくて、アンティークのある暮らし、そしてその喜びをお届けしたいんですよね。だか ら自分たちが扱う家具や建具がより素敵になる空間づくりのサポートは全力でお手伝いしたいんです。 そういう想いでやっていますので、求められればお客様が選んだ家具に合うように空間全体のご提案もしますし、少しサイズが合わなかったら修 理や調整なども全部まとめてお受けするんですよね。 少し自慢になってしまいますが、普通のアンティーク屋さんではここまではなかなかできないんです。豊富な知識と経験値、そして高い技術を持っ ているウェリントンだからできることなんですよ。少しじゃなくてかなり自慢しちゃってますね、これ(笑)